「人間もっと泣かなきゃだめだと思う」

「人間もっと泣かなきゃだめだと思う」

予告編

「頑張れって言ったって 何を頑張ればいいの?」

震災と原発事故から13年。福島では、時間を経てから発症する遅発性PTSDなど、こころの病が多発していた。若者の自殺率や児童虐待も増加。メンタルクリニックの院長、蟻塚亮二医師は連日多くの患者たちと向き合い、その声に耳を傾ける。連携するNPOこころのケアセンターの米倉一磨さんも、こころの不調を訴える利用者たちの自宅訪問を重ねるなど日々、奔走していた。
津波で夫が行方不明のままの女性、原発事故による避難生活中に息子を自死で失い自殺未遂を繰り返す男性、避難生活が長引く中、妻が認知症になった夫婦など、患者や利用者たちのおかれた状況には震災と原発事故の影響が色濃くにじむ。蟻塚医師は、かつて沖縄で、沖縄戦の遅発性PTSDを診ていた経験から、福島でも今後、長期にわたり、PTSDが発症すると考えていた。

「なんか生かされてんな」「誰に?」「それがわからんのですわ」

ある日、枕元に行方不明の夫が現れたと話す女性。
「生きていていいんだ、という希望を持った時に人は泣ける」と話す蟻塚さん。
米倉さんは、息子を失った男性にあることを提案。やがてそれぞれの人々に小さな変化が訪れていく。
喪失感や絶望に打ちのめされながらも日々を生きようとする人々と、
それを支える医療従事者たちのドキュメンタリー。

コメント

「何を頑張ればいいの?」
ふと漏れた言葉に、自分ならどうやって返すだろうと考える。
答えが出てこない。たじろぐ問いをいくつも投げかけてくる。

武田砂鉄
ライター

丹念な取材と真摯な考察によって、国家に翻弄された人たちのとてつもない苦しみが顕わになる。事実を知るにつけ、怒りと、何も役に立てない自分を恥じる気持ちが交差する。そして頭を垂れる。絶望的とも言える状況下で、患者にどこまでも寄り添う医療従事者たち。彼らの果てしない献身の末に行き着いたラストに、心底震えた。

大島 新
ドキュメンタリー監督

強く生きようとする人々の姿の向こう側に、心の傷から血を流し今なお耐え忍び泣いている福島を見ました。戦争も災害もひと通りの期間が過ぎたら世間から忘れ去られます。そして生き残った人々の「これからも生きていかなくてはならない」という辛く長い戦いが始まります。長いこと海外支援にばかり目を向けていた私ですが、自分の国、福島での現実にも改めて気づかされました。

白川優子
国境なき医師団

「寄り添う」という言葉がこの頃はよく使われているが、僕は使用をちょっとためらう。なんだか好意のほどこしを人に与えているようで、傲慢になっているのではないかと心が引っかかるからだ。だが、この記録には正真正銘の「寄り添い」がある。生きることに苦しんでいる人へのあたたかい気遣いがある。
それが観ていてとてもまぶしい。

安彦良和さんより本作に寄稿いただいたイラスト
本作に寄稿いただいたイラスト
安彦良和
漫画家

「戦争遂行のため」「核は安全だ」「もう被災地は復興した」という巨大な力の文脈から、振り落とされてきた無数の声。やがてそれは、「いつまで下を向いているんだ」という自己責任論に回収されていく。こうして「なかったこと」にされてきた痛みにそっと耳を傾ける、社会の「聴診器」のような映画だ。

安田 菜津紀
認定NPO法人Dialogue for People副代表
/フォトジャーナリスト

被災後の福島で未だに絶望的な悲しみを抱えて生きる人たち。そんな人たちに寄り添って生きる精神科医と看護師。何故原発が福島に?基地が沖縄に?私の怒りとは裏腹に絶望を乗り越えて生きようとするこの人たち。ジーンと胸に響く音楽とエンドロールのあと、更に希望のワンシーンが。この映画のタイトルに思わず拍手!

松元ヒロ
芸人

「生きて!生きて!生きて!」この映画を観たひとは、誰をもが思うだろう。震災による「こころの被害」は、叫ばれているにしては良くわかっていません。震災がどれだけ心を傷つけるか、その回復がどれだけ困難か・・ましてや「どのように癒されてゆくのか?」この映画はそこへ迫ったドキュメントです。ぜひこの映画を観て知ってほしい。

中澤正夫
精神科医

私達は知らなかったのか?
私達が知ろうとしなかったのか?
曖昧に流れた年月、責任逃れの、13年
振り回されているのは国家ではなく、人々
見えない希望が語りかける
無かった事にするのか?
傍観者は加害者になりえる
全世界が間違いなく、みるべき
生きて、生きて、『生きろ』
そう、『生きろ』とは
全人類へのメッセージなのかもしれない

サヘル・ローズ
俳優・タレント

映っているのは今の辛く厳しい現実と過去の知らなかった出来事。
アメリカは日本に、日本は福島や沖縄に、常に弱いところにしわ寄せを持っていく人間というものにどうにも絶望的な気持ちになるのに、でも、それでもやっぱり人間てすごいなあと思った。
「よくここまで生きてきましたね」と蟻塚先生が言うように、
「誰もが誰かに生かされ生かしている」と米倉さんが言うように、
まさに『生きて、生きて、生きろ。』なのだと思う。
それはこの映画に登場する人たちだけでなく、誰もがみんながそうなんだと思わせてくれる、そんな力が映っている映画だと思った。

足立 紳
脚本家「ブギウギ」・映画監督

「誰かに生かされているのかな…」。生と死の選択肢の狭間に揺れながらこう静かに自問する、息子を自死で失った男性。福島原発事故から13年、心の傷に向き合う人々との間で交わされる言葉から、「いのち」の在り方、「どう生きるか」という普遍的な問いを今の時代に生きる私たちに投げかけている。

林 典子
写真家

蟻塚先生の日常は悲しみ、苦しみに満ちているのに、先生の声を聞くとホッとするのはなぜか、よくわかる映画です。
原発事故のPTSDにさいなまされる一人一人の境遇に、福島県人の一人として怒りを新たに。福島が原発立地候補となった経緯を1953年の米議会から解き明かす資料、映像、証言、そして沖縄。感情と理性が交錯する。微かな希望がみえてくるラストの何と感動的なことか。どんなに傷ついても信頼があれば再生することができる!世界中で観て欲しい、です。

神田香織
講談師

(敬称略・順不同)

出演

蟻塚亮二

蟻塚亮二 (ありつか りょうじ)

精神科医。1947年福井県生まれ。中学生の時に東京オリンピック(1964)強化指定選手(水泳)に選ばれる。弘前大学医学部卒業。1985年から1997年にかけて青森県弘前市の藤代健生病院院長。2001年、精神保健功労にて青森県知事表彰。その後、2004年から13年まで沖縄県那覇市の沖縄協同病院などに勤務。2013年から福島県相馬市の「メンタルクリニックなごみ」院長を務める。現在も月に一度、沖縄での診察を続けている。
著書に『うつ病を体験した精神科医の処方せん』(大月書店 2005年)、『統合失調症とのつきあい方』(大月書店 2007年)、『沖縄戦と心の傷 トラウマ診療の現場から』(大月書店 2014年 沖縄タイムス出版文化賞2015)、『戦争とこころ』(沖縄タイムス 2017年、分担執筆)、『助けてが言えない』(日本評論社2019年、共著)『戦争と文化的トラウマ』(日本評論社 2023年、分担執筆)、「悲しむことは生きること〜原発事故とPTSD〜」(風媒社)など。

米倉一磨

米倉一磨 (よねくら かずま)

精神科認定看護師 。1973 年福島県南相馬市生まれ。航空自衛隊、陸上自衛隊を経た後、看護専門学校卒業(看護師免許取得)、福島県立医科大学大学院看護学研究科(精神看護学領域)修了。南相馬市内の精神科病院勤務時に東日本大震災と原発事故が発生。自らも被災しながら被災者や地域住民たちの心のケアをするため、福島県立医科大心のケアチーム(災害後の医療チーム)へ参加し、後に引き継がれるNPO の立ち上げに加わった。さまざまな住民の訪問や支援者への支援、心の啓発など幅広い心と体のケアを行っている。現在「NPO法人相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会 相馬広域こころのケアセンターなごみ」センター⻑。
著書に「災害看護と心のケア〜福島『なごみ』の挑戦〜」。共著書に「福島原発事故がもたらしたもの〜被災地のメンタルヘルスに何が起きているのか」など。

その他出演

医療法人社団メンタルクリニックなごみ
NPO法人相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会・相馬広域こころのケアセンター なごみ
患者・利用者の皆さま

スタッフ

島田陽磨

撮影・監督・プロデューサー島田陽磨 (しまだ ようま)

1975年生まれ。早稲田大学教育学部生物学専修卒業。探検部在籍時に起きたアマゾン川部員殺害事件で取材を受けたことをきっかけに日本電波ニュース社に入社。テレビディレクターとして、2003年のイラク戦争など国内外の報道や NHKなどのドキュメンタリー作品を数多く手掛ける。「二つの戦争・翻弄された日本兵と家族たち」(2015年朝日放送)で坂田記念ジ ャーナリズム賞。「ベトナム戦争 40年目の真実」(同)でニューヨークフェスティ バル ワールドベストテレビ&フィルム入賞。三度の訪朝取材をもとに北朝鮮と日本に引き裂かれた姉妹の58年ぶりの再会を描いた「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。」で第76回毎日映画コンクールドキュメンタリー部門ノミネート、World Media Festival 2023 ドキュメンタリー部門(Human Concerns) 金賞、ニューヨークフェスティバル 2023 ドキュメンタリー部門(History & Society)銀賞、US International Award 2023 ドキュメンタリー部門(History & Society)銀賞など。本作の短編版『Live,Live.LIVE』で、Tokyo Docs 2023 ショートドキュメンタリー・ショーケース最優秀作品賞。

編集前嶌健治 (まえじま けんじ)

東京都出身。株式会社ギトリ代表。ドキュメントからドラマ、バラエティ、ジャンルを問わず編集。島田監督の前作『ちょっと北朝鮮までいってくるけん。』も担当。映画作品『氷の花火 山口小夜子』(文化庁記録映画大賞)『ダンシングホームレス』(高円寺ドキュメンタリーフェスティバル大賞)『私のはなし 部落のはなし』(キネマ旬報ベストテン文化映画第一位)『掘る女 縄文人の落とし物』『ウクライナ 犬と戦争(仮)』(近日公開)などテレビ作品「撮影監督ハリー三村のヒロシマ」(国際エミー賞・芸術番組部門受賞)「バレエの王子になる!」(ギャラクシー賞選奨、NYフェスティバル銅賞)「ザ・ノンフィクション 花子と先生の18年~人生を変えた犬~」(NYフェスティバル銅賞)「NHKスペシャル 娘を手放した日」(NYフェスティバル銀賞)など。

音楽渡邊 崇 (わたなべ たかし)

1976年広島県生まれ。第37回日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞した『舟を編む』、ベルリン国際映画祭で特別表彰を受けた『663114』をはじめ、『湯を沸かすほどの熱い愛』『帝一の國』『浅田家!』『VRおじさんの初恋』『勇気爆発バーンブレイバーン』など、数多くの映画、ドラマで音楽を担当。その他にも携わった映画がカンヌ国際映画祭、ヴェネチア国際映画祭など多くの映画祭で上映されている。現在、大阪音楽大学特任教授。

撮影
熊谷裕達/前川光生/西田 豊
オンラインエディター
中田勇一郎
効果・整音
高木 創
撮影・助監督・宣伝美術
鈴木 響
協力
医療法人社団 メンタルクリニックなごみ
NPO法人 相双に新しい精神科医療保健福祉システムをつくる会
相馬広域こころのケアセンター なごみ
沖縄医療生活協同組合 中部協同病院
助成

文化庁文化芸術振興費補助金(映画創造活動支援事業)
独立行政法人日本芸術文化振興会

製作・配給
日本電波ニュース社 2024年/日本/カラー/113分

劇場情報

2024年5月25日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開

本作品は『UDCast』方式による視覚障害者用音声ガイド、聴覚障害者用日本語字幕に対応しています。

本作品は『UDCast』方式による視覚障害者用音声ガイド、聴覚障害者用日本語字幕に対応しています。

  • 音声ガイドは、専用アプリをインストールしたスマートフォン等の携帯端末をお持ちの方は、全ての上映劇場、上映回にて音声ガイド付きで映画をお楽しみいただけます。
  • 日本語字幕は、字幕表示専用のメガネ機器に『UDCast』アプリをダウンロードし、専用マイクを付けてお持ちいただければ全ての上映劇場、上映回にて、日本語字幕付きで映画をお楽しみいただけます。スマホやタブレットでUDCastの字幕を見ることもできますが、 画面の点灯により、他のお客さまの鑑賞の妨げにならないようにご注意ください。
  • 『UDCast』の詳細、動作確認、メガネ機器の貸し出しについては公式サイト(https://udcast.net/)をご確認ください。
  • 一部Android端末には『UDCast』アプリに未対応の機種がありますので、事前に動作確認をお願いします。
地域 劇場名 電話番号 公開日
東京 ポレポレ東中野 03-3371-0088 5月25日(土)〜
備考:
北海道 シアターキノ 011-231-9355 近日公開
備考:
宮城 フォーラム仙台 022-728-7866 6月7日(金)〜6月20日(金)
備考:
福島 フォーラム福島 024-533-1717 6月7日(金)〜6月13日(金)
備考:
大阪 第七藝術劇場 06-6302-2073 6月22日(土)~7月5日(金)
備考:
愛知 シネマスコーレ 052-452-6036 近日公開
備考:
京都 京都シネマ 075-353-4723 6月28日(金)~7月4日(木)
備考:
長野 長野相生座・ロキシー 026-232-3016 近日公開
備考:

そのほか順次公開予定